マリキナ Marikina フィリピンの革製品の聖地

マリキナ - メイド・イン・フィリピン

私は商品開発・デザインにかなりの時間をかけてきました。メトロ・マニラと近くの州を渡り歩いて、製造業者を見てきた結果、今では、鞄を見ると、フィリピンで有名な2つの製造拠点のうちどこで作られたかを言えるほどになりました。 その2か所とは、フィリピンのマリキナ Marikinaブラカン Bulacanです。

ブラカンの製造業者はミシン縫いに秀でています。彼らの作業はすばやく簡単ですが、月に1万個を生産できるほど優れた製造能力を持っています。 単純なデザインであれば、限られた納期で大量の需要に応えることができる確かな選択肢の1つです。

一方で、マリキナの製造業者は、もっと複雑で入り組んだ方法で鞄を組み立てます。彼らの持つ、靴製造の技能が鞄にもよく生かされています。 もし、高級感と高品質がほしければ、マリキナがその選択になります。 鞄は ディキット dikit(糊付けされた) と呼ばれる手法で、丁寧に組み立てられています。 基本的に、接着剤だけで鞄のすべてのパーツが組み上がります。すべてのパーツと部品がしっかりと接着されているのを確認して、縫製を済ますと完成します。 これによって、構造を持たせつつ、シームレスでかつ精巧な仕上がりとなります。 少しばかり時間のかかるものの、熟練した職人によって出来上がった鞄の品質は確かなものがあります。

ブラカンを選んでも、マリキナを選んでも、それぞれにメリット・デメリット、得意・不得意が存在しますが、 私の鞄を作るにあたって、デザインの美的追求の観点から、最終的にマリキナを選ぶことにしました。

※マリキナ Marikina はフィリピン メトロ・マニラの1地方都市の名前です。

支え合い

製造業者と付き合っていくのは難しいことでしたが、一度、誰が何をするかなどのポイントがつかめれば早いものです。 鞄のデザインと開発は決して簡単ではありませんでしたが、これが、この業界で「新人」として私の学んだことです。 たくさんの縫製職人に何度も来てもらい、ある作業を進めるためには誰にお願いしたらいいかがわかるようになりました。

自分自身が成長するように、小さなビジネスの成長を見とどけられることはすばらしいことです。 私は、大規模に展開する縫製業者よりも、家内工業的なほうが好きです。 大きくなるとそれだけ欲張りになります。すると、自分のためだけに仕事をとるようになります。 私の役目は、すでにビッグになってしまった人たちよりも、まだちょっと伸びきってないけれども、本当に腕のいい職人たちと仕事をすることです。 職人たちが、それで幸せを感じてもらえるなら、私としても役に立ちたいと望むところです。 彼らに仕事の機会を作ってあげられれば、私としてもやりがいがあります。 私は、彼らがよく働いてくれる分だけ私も仕事を頼みたいと思っています。 なによりも、私の国(フィリピン)の人々に仕事の機会を創出することのほうが、世界のどこか別の場所で私のデザインが製造されるよりも価値のあることだと考えています。 私の鞄が「メイド・イン・フィリピン」であることをとても誇りに思います。

2013年10月10日
ロン・カタギリ